
災害区分 台風
発災から死亡までの期間 1週間以内
性別・年齢 男性・40歳代
死因 急性心筋梗塞の疑い
死亡までの経緯等
発災の約1か月前に受けた健康診断では血圧も正常値であり、既往もなく、通常の生活を送っていた。
発災時は台風の影響により、浸水や停電により自宅での寝泊まりができなかったことから、熱中症を避けるため、自宅外に駐車している軽自動車内で車中泊をしていた。発災から2日後、体調不良を訴え受診したところ、口蓋垂炎と診断され、そのまま帰宅。その日の夜も車中泊を継続した。翌朝は体調に問題はない状況であったが、夜に自宅内で急に苦しみだし、会話もできない状態となった。すぐに救急要請を行ったが、救急隊到着後に心肺停止となり、搬送された病院にて急性心筋梗塞の疑いのため死亡した。
災害により自宅が浸水、停電し車中泊をせざるをえない状況であり、車中泊が急性心筋梗塞の発症又は症状の悪化の原因となった可能性は十分にあると考えられ、災害と死亡との間に相当因果関係があると認められた。
狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)とは
虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があります。
狭心症は動脈硬化などによって心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血液の流れが悪くなった状態です。主に歩行などの動作をしているときに、胸を圧迫されるような痛みの発作が繰り返し起こり、数分以内におさまります。発作が起きたときには、冠状動脈を拡張する作用を持つニトログリセリンを舌下服用するとおさまります。
狭心症はなんらかの動作中に起こることが多いのですが、安静時に冠動脈のけいれんが起こり、狭心症の発作が起こる場合もあります(冠攣縮性狭心症)。
一方、心筋梗塞は、動脈硬化によって心臓の血管に血栓(血液の固まり)ができて血管が詰まり、血液が流れなくなって心筋の細胞が壊れてしまう病気です。胸に激痛の発作が起こり、呼吸困難、激しい脈の乱れ、吐き気、冷や汗や顔面蒼白といった症状を伴うことがあります。痛みは20分から数時間にわたることもあります。激痛は胸だけでなく、胃のあたりや腕、肩などにも起こることがあり、これを放散痛と言います。心臓の血管が一瞬で詰まると、突然死することもあります。
狭心症や心筋梗塞が疑われる場合、心臓カテーテル検査を行って、狭くなっているところや詰まっているところを見つけ、その部位で風船を膨らませて血管を拡張させるPTCA(経皮的冠動脈形成術)や、さらにその部位にステントという器具を入れて固定する治療がよく行われます。また、冠動脈バイパス手術が行われる場合もあります。
虚血性心疾患の予防
虚血性心疾患の3大危険因子は、喫煙・LDLコレステロールの高値・高血圧です。またメタボリックシンドロームも危険因子の一つです。
健康診断でこれらを早めに見つけることが重要です。生活習慣では、喫煙のほか、動物性の油に多く含まれる飽和脂肪酸のとりすぎ、お酒の飲み過ぎ、食塩のとりすぎ、運動不足、ストレスが虚血性心疾患のリスクを高くします。一方、魚や野菜、大豆製品には、虚血性心疾患を予防する働きがあります。