
災害区分 豪雨
発災から死亡までの期間 3か月以内
性別・年齢 女性・90歳代
死因 急性心筋梗塞
死亡までの経緯等
被災者は、脊柱管狭窄症や高血圧の持病はあったが、散歩にも行けるなど、普通に日常生活を送ることができていた。
自宅が被災し、生活の拠点である1階が浸水したことにより、2階で生活することとなったが、浸水したことでエアコンが壊れ使用できなくなったことや、1階にしかトイレがなかったため、持病で足が悪い中、階段を上下するなど、身体的負担が大きかった。このような生活を送る中で、頻尿、認知症の症状が進み、介護老人保健施設へのショートステイの手続きを進めるため、かかりつけの病院を受診した際に、血糖値が400以上と高くなっており、炎症反応も出ている旨の診断が出された。
次第に体調が悪化し、被災から18日後に入院。本人希望により3日間で退院し、帰宅するが、介護が必要な状態が続き、介護老人保健施設に短期入所。短期入所から約1週間後に施設で倒れ、救急搬送先の病院で急性心筋梗塞のため死亡した。
住環境が悪化した被災家屋での生活が身体的負担となり、心筋梗塞が引き起こされ死亡したものと推認され、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた。
狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)とは
虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があります。
狭心症は動脈硬化などによって心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血液の流れが悪くなった状態です。主に歩行などの動作をしているときに、胸を圧迫されるような痛みの発作が繰り返し起こり、数分以内におさまります。発作が起きたときには、冠状動脈を拡張する作用を持つニトログリセリンを舌下服用するとおさまります。
狭心症はなんらかの動作中に起こることが多いのですが、安静時に冠動脈のけいれんが起こり、狭心症の発作が起こる場合もあります(冠攣縮性狭心症)。
一方、心筋梗塞は、動脈硬化によって心臓の血管に血栓(血液の固まり)ができて血管が詰まり、血液が流れなくなって心筋の細胞が壊れてしまう病気です。胸に激痛の発作が起こり、呼吸困難、激しい脈の乱れ、吐き気、冷や汗や顔面蒼白といった症状を伴うことがあります。痛みは20分から数時間にわたることもあります。激痛は胸だけでなく、胃のあたりや腕、肩などにも起こることがあり、これを放散痛と言います。心臓の血管が一瞬で詰まると、突然死することもあります。
狭心症や心筋梗塞が疑われる場合、心臓カテーテル検査を行って、狭くなっているところや詰まっているところを見つけ、その部位で風船を膨らませて血管を拡張させるPTCA(経皮的冠動脈形成術)や、さらにその部位にステントという器具を入れて固定する治療がよく行われます。また、冠動脈バイパス手術が行われる場合もあります。
虚血性心疾患の予防
虚血性心疾患の3大危険因子は、喫煙・LDLコレステロールの高値・高血圧です。またメタボリックシンドロームも危険因子の一つです。
健康診断でこれらを早めに見つけることが重要です。生活習慣では、喫煙のほか、動物性の油に多く含まれる飽和脂肪酸のとりすぎ、お酒の飲み過ぎ、食塩のとりすぎ、運動不足、ストレスが虚血性心疾患のリスクを高くします。一方、魚や野菜、大豆製品には、虚血性心疾患を予防する働きがあります。